- 文庫/30p/¥300-
- 20180716(第7回Text-Revolutions)発行
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一杯未満の夜
グラスの中で氷が音を立てる。
今日は静かだ。
自分が生まれる前から宇宙中でやっている戦争は今日も続いている。この辺りでは近々何十回目かの停戦が成立するらしいが、どうせ一年ももちやしない。
戦闘機パイロットなんて損な仕事だなと思うが、しかしそれを選んだのは、自分。
グラスに口をつければ冷えた焼酎が咽喉から胸に沁み渡る。今日は一杯飲み干せるだろうか。あと少し、
――警報音と共にあちこちで赤い灯が点滅する。緊迫感溢れるアナウンスがパイロットたちに出撃を要請する。要請は命令だ。
通信機から上官が慌ただしく呼ぶ。
「酔ってますよ」
そんなこと、気にもされない。
マスターに見送られバーを出る背後で、氷が音を立てた。
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- 第二十九回お題:氷
- 20170204(296文字)